個人事業主の破産事件における事業継続

現在、破産管財人に就任していたり再生代理人になっていたりと倒産関係の業務を多く取り扱っています。その中で、悩むのが「個人事業主」の場合です。法人は破産して清算してしまえばよいですが「個人事業主」は自然人ですので、人格を消滅させるわけにはいきません。ですから、破産、個人再生といった手続を駆使して、事業の継続を模索することになります。

 

では、破産をしながら事業を継続することができるのでしょうか。法人が美容院を経営していたものの、その後個人事業として事業を継続しているということがあります。確定申告書をみても赤字で申し立てをしている時点でも事業を継続しているという案件に接します。

結論的には、事業の継続自体は可能であると考えられます。ただし、固定主義と免責による債務者の救済を骨子とする破産制度のスキームからいくと、個人事業主本人が財団帰属財産を利用せず、事業を継続する場合なので同法が規律する場面ではありません。

固定主義からすれば、財団帰属財産の利用はいけないが、それ以外の財産を使用しての事業継続は法的に問題はないということになります。そこで、事業継続には、資産が財団帰属財産になるのか、自由財産になるのかの区別が問題となります。例えば、美容院の備品について50万円で親族に売却し、親族から使用貸借を受けて使用しているということをみかけます。ちなみに、この売却代金は、破産申立費用等に使われていたりします。

このように、破産財団に属して、換価価値が認められ、自由財産の拡張対象にもならない物件については、親族に売却して、親族から破産者が借り受けるか、破産者が自由財産から代金相当額を破産財団に組み入れることによって、利用継続をすることが可能になる例もあります。

ただし、裁判所によっては、事業価値相当分を組み入れさせるという裁判所もあるようです。もっとも、破産するような事業ですから、独自に営業権が認められるような事業価値は認められにくいと思われます。

もっとも、このようなスキームを使って経営再建を図るにしても、債権者からすれば、外見上は同じように事業継続をしているのに、負債だけ免れているように映ります。破産免責の制度は、誠実な債務者を債権者の犠牲の下に保護する制度であることを今一度意識する必要があるものと考えます。

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