オーナー株の相続

さて相続で遺産分割が決まるまでの間、株式の権利はどのように行使されるのか、特に同族会社の場合は大きな問題となります。

 

事業承継といえば過ごし大袈裟ですが、遺産分割がまとまるまでは法律上、共有ということになりその権利行使は過半数で決めることになることになります。

 

なんとなれば、当然のことを判決しただけなのですが、会社法の規定が、創設的な規定で、そうではなくても行使できると解釈する余地があることから問題となっていました。

本件は、Y社の発行済株式の総数3000株のうち2000株をAと2分の1ずつの持分割合で準共有しているXが、Y社の株主総会決議には、決議の方法等に法令違反があると主張して、Y社に対し、会社法831条1項1号に基づき、上記株主総会決議の取消しを求めた事案である。上記の2000株(本件準共有株式)について、会社法106条本文の規定に基づく権利を行使する者の指定およびY社に対する通知はされていなかったが、Y社がAによる本件準共有株式全部についての議決権の行使(本件議決権行使)に同意したことから、同条ただし書により、本件議決権行使が適法なものとなるか否かが争われた。
具体的にいうと、会社法106条ただし書の意義について、準共有株式についての権利の行使の方法について民法の共有に関する規定に対する「特別の定め」(同法264条ただし書)を設けたものと解した上で、会社法106条ただし書は、株式会社が当該権利の行使に同意をした場合には、権利の行使の方法に関する特別の定めである同条本文の規定の適用が排除されることを定めたものとしました。しかし、会社法106条ただし書を解釈し、同条本文が同条ただし書により打ち消された後の規律については、同条本文と準共有に関する民法264条との関係から、準共有株式についての権利の行使は民法の共有に関する規定に従っている必要があると解したものと考えられる。判決の立場は、問題となる権利の内容に応じて、当該権利の行使が、準共有株式の保存行為(民法252条ただし書)、処分もしくは変更行為(同法251条)、または管理行為(同法252条本文)のいずれの場合に該当するのか、また、該当する場合における所定の要件を充たすのかによって、当該権利の行使が株式会社の同意により適法となるか否かを判断するものであるといえます。

本判決は、「本件議決権行使の対象となった議案は、①取締役の選任、②代表取締役の選任並びに③本店の所在地を変更する旨の定款の変更及び本店の移転であり、これらが可決されることにより直ちに本件準共有株式が処分され、又はその内容が変更されるなどの特段の事情は認められないから、本件議決権行使は、本件準共有株式の管理に関する行為として、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決せられるもの」とした。

判決内容は以下のとおりです。

会社法106条本文は,「株式が二以上の者の共有に属するときは,共有者は,当該株式についての権利を行使する者一人を定め,株式会社に対し,その者の氏名又は名称を通知しなければ,当該株式についての権利を行使することができない。」と規定しているところ,これは,共有に属する株式の権利の行使の方法について,民法の共有に関する規定に対する「特別の定め」(同法264条ただし書)を設けたものと解される。その上で,会社法106条ただし書は,「ただし,株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は,この限りでない。」と規定しているのであって,これは,その文言に照らすと,株式会社が当該同意をした場合には,共有に属する株式についての権利の行使の方法に関する特別の定めである同条本文の規定の適用が排除されることを定めたものと解される。そうすると,共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において,当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは,株式会社が同条ただし書の同意をしても,当該権利の行使は,適法となるものではないと解するのが相当である。
そして,共有に属する株式についての議決権の行使は,当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り,株式の管理に関する行為として,民法252条本文により,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられるものと解するのが相当である。
6 これを本件についてみると,本件議決権行使は会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたままされたものであるところ,本件議決権行使の対象となった議案は,①取締役の選任,②代表取締役の選任並びに③本店の所在地を変更する旨の定款の変更及び本店の移転であり,これらが可決されることにより直ちに本件準共有株式が処分され,又はその内容が変更されるなどの特段の事情は認められないから,本件議決権行使は,本件準共有株式の管理に関する行為として,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられるものというべきである。
そして,前記事実関係によれば,本件議決権行使をしたBは本件準共有株式について2分の1の持分を有するにすぎず,また,残余の2分の1の持分を有する被上告人が本件議決権行使に同意していないことは明らかである。そうすると,本件議決権行使は,各共有者の持分の価格に従いその過半数で決せられているものとはいえず,民法の共有に関する規定に従ったものではないから,上告人がこれに同意しても,適法となるものではない。

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