電話代行と本人確認義務

詐欺会社が、別人名義で電話回線のレンタル契約をする、いわゆる「場所貸し」サービスは、いろいろな類型があると思います。

 

そんな中で、別人名義で、電話回線のレンタルをしてしまった電話代行・秘書サービスに責任はあるのでしょうか。

 

さいたま地裁平成27年5月12日判決によれば、電話回線レンタル業者が「免許証の写し」しか確認しておらず、しかも免許証の写真と申込みをした者を対照していなかった点で、本人確認義務違反があったとされました。そして、詐欺業者との共同不法行為が認められてしまいました。判決は、本人確認を怠った電話回線が詐欺行為に利用されることは容易に予見できるとして、被害者に対する詐欺会社との共同不法行為責任を認めています。

 

しかし、このケースは、オレオレ詐欺のように、電話を主たる要素として、加害行為が成立する場合に限られると思いますから、その射程距離はあまり長くないように解すべきように思われます。例えば、一般の連絡手段として、電話会社が責任を負うべきとされれば、電話会社の事業リスクが高まりかねないと考えられるからと思われます。他方、こうしたベンチャーは、あまり本人確認を厳しくすると、事業上、直接電話回線会社(NTT)と契約すれば足りるとされてしまう可能性もあるように思われます。本件では、免許証の原本を確認しなかった点、本人対照をしていなかった点がポイントであると思われ、たしかに免許証であるのにコピーしか持参できない人は怪しいと思われます。

 

こうした実務上の参考やまた、免許証などの本人確認のあり方について参考になる裁判例であると思われます。

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