ショーペンハウアーと母親との決別

ショーペンハウアーといえば、ドイツの哲学者・思想家で、ニーチェに影響を与えましたが、日本ではあまり知られていません。

 

ショーペンハウアーを読むとき、厳しい現実から目をそらさず、受け止めたうえで、自分の人生をスタートさせようという気持ちにさせてくれます。

 

例えば、物質的な障害であろうと、障害と闘って勝つことが人間を幸福にするとの一節があります。

 

実は、ショーペンハウアーの生き方やそれに裏付けられた哲学は、母親に見捨てられたこどもがどうやって自分の心持を保つのか、という一つの処方箋といえます。

 

たしかにショーペンハウアーは、ペシミスト(悲観主義者)と位置づけられています。しかし、同人はそれをどのように克服しているか、という点に重点があるといえるでしょう。

 

ショーペンハウアーは、裕福な商人の長男でしたが、父が亡くなり、母親とは相性が悪く別居して暮らしていました。

 

実家から出ていくとき、二度と自分の前に姿を現さないように通達された彼。彼はそのとおりにして、そうすることで心の平穏を保っていました。

 

彼のペンミストとしての理論はこうしたものの影響を受けている可能性があります。つまり、世の中の現象には意味などはないという悲観的な哲学を打ち立てることにより、現象はこの世に渦巻く欲望が現れたものにすぎないと論じています。

 

つまり、母親が彼の安全基地にはならず自分勝手な自己愛的な振る舞いをするということも、同じく欲望が現実化しただけなのだ、と論じるわけです。そうすると,母親の行動は怒りや悲しみを抱くほどのことではないと割り切ることができる、そう理解するようで、ショーペンハウアーは自分を守ろうとしたものだと論じることができるのです。

 

ショーペンハウハーは母親を求める気持ちを断ち切り、それまで抱いていた自殺願望は母親との決別によりなくなっていました。明晰にいえば、ショーペンハウアーは母親を心理的な安全基地とできず、かえって支配されていたのでした。したがって、決別していなければ自殺していたかもしれず、母親との適度の距離を保ったことや、母親の自分に対する期待を見限ったことが、結果的には、彼の人生を救い、また哲学や人生論に向かわせることになったものと思います。

 

このように、愛情のない母親のそばにいる場合、母親に愛して欲しいという気持ちを持つこどもほど傷ついてしまうと考えられています。そこで彼は、母親とのかかわりを絶つことによって気持ちの平穏を取り戻すことができたといえるかもしれません。

 

そして、ショーペンハウアーは、「明るさは、そのままで良いものであり、最高の宝物である。明るいことがあれば、いつまでもそれを取り入れる。私たちは、幸福になるためには、この明るさを確保し、増やすべきである。

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