予備試験合格者が350人に。

法務省が行っている法科大学院を修了しなくても,司法試験の受験資格が得られる予備試験の合格者が350人であることが分かりました。他方,法科大学院に入るためのセンター試験である適性試験は約6000人。平成15年では3万5000人の受験がありましたので,法科大学院経由の人気は大きく後退しているといえます。

 

この現実はどう受け止めるべきなのでしょうか。

 

この点は,私は,今後は,予備試験経由で司法試験を受験することを主なルートの一つとして認めるべきだ,と思います。現実に,ある資格を得るために大学院の修了を要求し,その後,国による無給の実習(修習)が強制されているということは,他の資格ではないことです。

例えば,公認会計士にも会計大学院がありますが,受験要件ではありませんし,税理士なども大学院卒業による一部優遇はありますが,受験要件とはなっていません。その他は,法学系の資格は,一定の実務経験を要するものもありますが,普通は,何の受験資格もない,あるいは大卒であれば良い,といったところです。

 

読売新聞の8日の記事では,

 

「現役学生が法科大学院での勉強を省略するための「抜け道」となっている実態が改めて浮かび上がった。」

 

と否定的な評価をしています。

​ しかしながら,司法試験自体科目が多く,まぐれで合格するような試験ではありません。また,学術的センスがあり合格しても実務的センスがなければ修習の試験(二回試験)で落ちてしまいますから,「勉強を省略」というセンスはどうか,と思います。

 

そもそも,司法試験のために長い勉強時間を費やす方が,私は「無駄」と思っています。昔は,実務よりも学術の方が上ということがいわれましたが,実務で要求される能力と学者の能力は異なることから,助教授が一定期間経過すれば弁護士登録できるという「抜け道」は廃止されました。

それにしても,法曹を志すにも,①適性試験の利権,②法科大学院の利権-が,理想の試験のあり方もゆがめていると思わざるを得ません。ご承知のとおり,学校運営というのは,経営基盤が安定化しやすいといわれています。なぜなら,やることが大体決まっている,補助金も得られる,生徒は学問のためであれば経済的支出をいとわないことが多いからです。

20代というのはビジネススキルを修得する下積みとして,大事な時期ですから,それを長い期間法科大学院で浪費するのは,「人生の無駄」が多いような気がします。

試験は「勉強を省略」していては合格できないのですから,予備試験を受験する方をネガティブに評価して,法科大学院制度の利権を守ろうとしている人たちに,翻弄されないように注意する必要があると思います。

 

一部の学者さんの権益を守るために,法曹制度がゆがめられてしまったら,本末転倒という印象を受けます。読売さんも,こうした構造を理解して報道していただくよう希望します。

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