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医療過誤:予防的療法にも厳しい判断がなされた事例

 

1 最高裁平成18年10月27日ですが、担当医師に説明義務違反がないとした原審の判断を違法として審理のやり直しをさせました。

 これは、「未破裂脳動脈りゅう」の疾患の患者でした。この動脈瘤については、術式としては、保存的治療をして経過観察をする方法と、積極的治療をするということで、開頭したうえで動脈瘤の頸部をクリップで閉じてしまって、止血をして瘤に血液が流れないようにするというもので、医学的機序としては合理的なものということができます。

 

2 さて、このような消極的な治療と積極的治療ですが、どちらも当時の医療水準にかなうものでした。

  主治医はざっと放置しておいても、破裂しないこともあるので治療しないが、可能性の問題として破裂する恐れはあること、もし治療するとなると開頭手術とコイルそく栓術の二つの方法があると説明をしました。開頭手術では95%完治するが5%は後遺症、コイルは脳梗塞を起こす可能性がある、―として、緊急性がないことから、患者に熟慮させたという事案でした。

 

 はたして、これでなぜ、説明義務違反があるのでしょう。

 

ここは、よくあることといえばそうなのですが、3日前のカンファレンスという検討会議で、動脈瘤体部の背部がみえないことがわかりました。これでは、開頭手術をすると、貫通動脈等を閉塞してしまうことになります。しかし、この点も、抽象的可能性にすぎないように個人的には思います。

 

そこで、別の術式である「コイルそく栓術」が登場し、これで手術をしたところ、死亡してしまったというわけです。

 

結果的に、「コイルそく栓術」が実施されましたが、案の定、リスクどおりコイルの一部が瘤外に逸脱してそく栓できませんでした。

結果、脳梗塞となってしまい死亡してしまったのです。

脳梗塞は、脳に栄養を運んでくる動脈の閉塞のため、脳に血液が供給されてにくい状態となり、脳組織が酸素不足のため壊死、壊死に近い状態のことをいいます。

 3 原審は,上記事実関係の下において,担当医師は,動脈りゅうの危険性,患者が採り得る選択肢の内容,それぞれの選択肢の利点と危険性,危険性については起こり得る主な合併症の内容及び発生頻度並びに合併症による死亡の可能性を患者に説明したということができるので,説明義務違反は認められないとして,患者の遺族の請求を棄却すベきものとしました。

 しかし、患者の視点からみると、まずは経過観察を選び、次に開頭手術を選ぶ、最後にコイル式となるかなという印象を受けます。つまり、患者は、経過観察と開頭手術との比較考量の機会はあったが、経過観察とコイル式との比較考量の機会はなかったという点が説明義務違反を招くか、という点がポイントと考えられます。今回は、コイル式について熟慮期間を与えていないということがまずかったということになるでしょう。

 4 最高裁平成18年10月27日は、最高裁平成13.11.27民集55巻6号1154頁において展開された医師の説明義務についての一般論を引用した上で,「予防的な療法を実施するに当たって,医療水準として確立した療法が複数存在する場合には,その中のある療法を受けるという選択肢と共に,いずれの療法も受けずに保存的に経過を見るという選択肢も存在し,そのいずれを選択するかは,患者自身の生き方や生活の質にもかかわるものでもあるし,また,上記選択をするための時間的な余裕もあることから,患者がいずれの選択肢を選択するかにつき熟慮の上判断することができるように,医師は各療法の違いや経過観察も含めた各選択肢の利害得失について分かりやすく説明することが求められるものというべきである」と説示しました。

 たしかに、担当医師らは相当程度の説明を行っているようであり,当初,1か月弱の期間をかけて熟慮させた上で,患者に「『開頭手術』を受けること」を選択させているにもかかわらず,同手術実施の前々日の約30分ほどの説明だけで,「コイルそく栓術」を受けるという選択に患者の方針を変更させているという点などの経過に、にわかには納得し難い違和感を覚えたものと考えられます。

 

 5 本判決は,前掲平成13年判決で展開された一般論を前提に,予防的な療法を実施するに当たって,医師は,①各選択肢の利害得失に関わる医学的知見のうち医療水準となっているものについては,説明を省略することは許されず,分かりやすく説明すべきであること,②各選択肢に伴う危険の内容については,抽象的なレベルの説明では足りず,具体的に分かりやすく説明すべきであること,また,③その上で,患者には熟慮する機会を与えるべきであることを述べるものであり,予防的な療法を実施する場合の医師の説明義務について,相当に高い水準を求める姿勢を示すものといえます。


 本件では、経過観察、つまり保存的治療が生き方にもかかわってくるとの指摘は注目されます。こうした積極的かつ攻撃的な手術のみならず選択肢としての経過観察は重要な利益として考慮されなければならないと解されるものです。

 結果的に、予防的な療法の実施についてもきちんと説明し比較衡量の機会を与えないといけない、との判断と考えられます。

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