税引前当期純利益と当期純利益との齟齬

税引前当期純利益とは、経常利益に特別利益を加算して、特別損失を控除して求める数字ということになります。

実は、この「税引前当期純利益」が法人税の課税の前提となる利益となり、ここから法人税等を控除したものが当期の税引後の最終利益となる「当期純利益」となります。

 

とはいうものの、税金の世界の話はそれほど単純ではなく、会計との間には齟齬があります。ですから法人税申告は加算減算処理がいることから税理士関与を必要とする会社が多いわけですね。

 

細かい加算減算処理がたくさんあります。要するに、税法上は益金となるが会計上は収益にならなかったり、費用にはなるが損金にはならないという齟齬があるのです。

 

その齟齬が生じる理由は原則は、「税金をたっぷりとるため」です。副次的に何らかの政策的理由がある場合もあります。

 

交際費はどうでしょう。

 

交際費は資本金1億以下の中小企業の場合は800万円までは、会計上の費用、税法上の損金として認められていて齟齬はありません。

 

しかし、800万円を超えたらいったいどうなるのでしょうか。

 

会計の世界では、性質が変わるわけではありませんので、交際費=費用ですから、会計上は費用になります。

 

しかし税金の世界では、そんな頭の固いことをいっていると「税金をたっぷり」とることができません。

 

そこで、税法上は損金に計上することはできない、という論理となるのです。

 

その結果、損益計算書としては交際費は経費として費用になっているわけですが、税金では計算上の損金になりません。

 

いってみれば、交際費は税引前当期純利益を計算するために、費用として控除されているのですが、税金の計算上は損金ではありませんので、税引前当期純利益に損金にならない部分を上乗せする(加算する)ことで申告をすることになります。

 

また、繰越欠損金も同じことがいえます。繰欠というのは、赤字が出たら、翌期の黒字(課税所得)と相殺できる税務上の特別ルールです。

 

別に今期の話であれば繰欠があってもなくても、損益計算書の税引前当期純利益には影響を与えることはありません。

 

しかし、課税所得からは相殺してマイナスしてしまっても良いわけです(減算する。)。

 

このように、利益と所得は齟齬が生じることになります。一貫した会計理論と政策的な税金徴収ルールという哲学が違うものがまじりあっていることから生まれているといえるでしょう。

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