競業避止義務はどこまでか。
Q A業種のフランチャイズに加盟していたのですが,SVや本部との間で契約で指定された業者と取引をしていたところ,業者が債務不履行を起こし損害が発生しました。
しかし本部は何の損失補填もしてくれないため不信感が高まり,契約を解除し自主営業を始めることになりました。競業避止義務に違反するといわれると看板を付け替えただけですのでそのとおりかもしれませんが,私の業種は経験の蓄積が大事な仕事で,ノウハウ化しにくいものがある業種です。そうした場合でも,競業避止義務の対象になるのでしょうか。また,違約金が36ヶ月とされているのですが,1年しか加盟していないのに36ヶ月分も支払うのは納得いきませんし,イニシャルフィーすらペイしていないという感覚です。
A 原則としては契約があります。私的自治の問題からすれば契約は守らなければならないというのが原則的処理ということになります。
しかし,公序良俗違反として,契約の一部が有効になるか無効になるか,諸事情を考慮して総合評価をするということになるかと思います。
もっとも,近時のフランチャイズ契約については,法務顧問にきちんと依頼して作成しているケースが多いので,当該契約に違反した場合でも公序良俗違反を主張できる例はあまり多くなく,債務整理の示談交渉と似た要素があるといえるかもしれません。
あまりに高額な違約金の定めについては本部側が被る損失と比較して合理性が認められないことから,信義則を理由として一部無効となることがあり得ます。
競業避止義務については,①ノウハウの維持,②商圏の維持の2つの目的があるとされています。
この目的達成に必要かつ相当な制限であるかということが考慮されるといえます。
契約違反がある場合においても,損害額の算定が難しいといえます。なぜなら,本部の営業権侵害が損害ということになるかと思います。しかし,本部の損害の内容,加盟店の営業の自由,不正競争との境界線はどこであるかという問題が多く,契約で損害賠償額の予定の約定をするケースが多いと考えられます。
このような場合は違約金請求だけではなく,営業の差し止めを求められることがあります(大阪地判平成22年1月25日判タ1320号136頁)。この判決においては,解除日直近の12ヶ月の店舗経営の実績に基づく月間営業総売上に対して,一定算式に基づく本部のロイヤリティ36ヶ月分を支払うという内容でしたが,同判例は,かかる違約金条項を有効として,元・加盟店に914万円の支払を命じられる判例が出ています。
このように,フランチャイズ契約を締結して,これを解消し独立への道を歩む場合は事前にきちんと準備を行う必要があるかと思います。紛争の裁判基準ということになってきますと,弁当販売業の事例ではありますが36ヶ月程度の違約金は有効にした例が出てきます。
もっとも,フランチャイズといっても独立した事業者なのですから,独立を検討される場合は弁護士の法務意見をきいて準備をされる必要があるかと思います。特に,ノウハウがあまり特殊でないものについては1~2年程度でノウハウが特殊なものではないとか,経験として吸収してしまうということがあります。
縁切りをする場合,離婚と同じですが相手は経済的利害に加盟店を巻き込んでいますので,こういった段階にも弁護士に相談されることをおすすめします。