民間ビルの立退補償について

1 定義

建物賃貸借契約の終了に際して、賃貸人から賃借人に対してなされる金銭給付

2 法的側面

立退料は法律上の規定はないので,合理的な立退料は不明確。強調されているのは個別案件。なお、借地権価格としては、法的保護利益、寄与配分利益、付加価値利益の複合利益の経済的価値との見解もある。

寄与分配分利益とは、当該土地に対する借地人の必要費、有益費の投下、草分け的借地人として当該地域の発展に貢献し、土地の増加、維持に寄与した分の配分利益をいう。その実質は不当利得の返還請求に基づくもので借地人に当然に帰属するものである。寄与分配分利益は、実質は不当利得であるから、借地関係が消滅し、もしくは対抗できなくても土地所有者に対する権利として残存することになる。いわゆる場所的環境というのは、借地人の権利として残る寄与分配分利益とみることができる。(判例タイムズ1020号16ページ)。

付加価値利益というのは、都市部においては所有権価格以上の値がつくことがあるが、このような借地権の希少さから発生する利益のことをいう。これは市場の動向によって決定される。

3 立退補償の要素

① 移転実費

② 居住権、営業権

移転先で従前の営業ができるための費用や休業補償

③ 立ち退きにより消滅する利用権の補償

賃貸借は物権ではないが物権的効力を持つという前提。民法では予定されていないが、賃借人が承諾しなければ居住をすることが法律上できる場合。継続的に居住できる権利を金額で計算せざるを得ない。

④ 開発利益の分配

立ち退きにより、土地の価額が上昇する分大家は利得を得ることになり、借家人の貢献が認められ、一定の開発利益の分配を受けられるという考え方(ただし,主に公共工事による価値の増加を見越して開発者が公共施設についての金銭負担を正当化する論理であったり、公共施設の開発により受益関係が生じる者に対する金銭負担を正当化する論理であったりする。立退料には「開発利益の分配」が含まれる可能性があることを示唆するにとどまり、明示的には触れていないものが多く、開発利益の分配に焦点をあてて調べると、公共事業による価値増加で国民に負担を求める論理になってしまっている、ようである。

4 判例により立退料

判例は、立退料について合理的な利害調整を図る一種の解決金としての側面を持つことから,当事者合意に向けた合理的な立退料の算定を行おうとしている。

そして、立退料の決定は賃貸借契約の成立の時期及び内容、その後における建物の利用関係、解約申し入れ当時における双方の事情を総合的に考量して裁判所の裁量によって自由に決定することができる、とする。しかし、一般には、立退料の決定額は正当事由を補完するに足りる金額。結果を他の事案には適用しにくいと考えられる。

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