原状回復義務の内容

20年貸していた借家が明け渡しを受けたら、目も当てられずボロボロということはありませんでしたか。

 

原状回復義務ですが、賃借人の責任による損耗を修繕することをいいます。しかし、賃借人の責任によらない通常の使用による自然に損耗毀損する部分の修繕までは必要ないといわれています。

通常損耗以外の賃借人の責めに帰すべき事由によって生じた損耗については、原則として賃借人に原状回復義務があります。しかしながら、問題は通常損耗の射程距離がどこまで伸びるのかという点にあると考えます。

 

すなわち、賃貸物件の損耗の発生は予定されていることですから、通常はこの部分の減価文というのは減価償却費、修繕費などの必要経費分は賃料に含まれている、とされています。

 

このように原則論を押さえておきますと、建物の使用によって通常生じる経年劣化や自然損耗の補修費用は賃料の中に含めて既に支払を終えているので、あらためて賃借人は負担する必要はない、という論理となっています。

 

具体的には、私も経験がありますが、具体的に損耗しているという事実が確定できても、それが通常損耗であるのか、賃借人の故意・過失がある損耗であるのかというのは難しい問題といえます。特に台所の油汚れやたばこのヤニ汚れ、畳の交換などがよく問題とされています。

 

大家さんの立場からすれば、たばこのヤニ汚れ、畳の交換もフォローして欲しいものです。

しかしながら、台所などは通常の使用によっても汚れていくものです。したがって、通常の汚れである限りは、クリーニング、交換費用も原状回復費用の内容には原則的に入らないことになります。

 

なお、原状回復については国土交通省のガイドラインがあります。理論的には新品に取り替えてしまうと経年劣化・自然損耗の部分まで元も戻り大家は利得を得てしまうことが考えられます。そこで税法の減価償却の発想に似ていますが、経過年数の考え方を採用しています。

 

たしかに1年経過して破損したのか、10年経過して破損したのかは、後者の方が賃貸人の方が10年の方が経劣化もありますから、10年経過の方が両者の修繕費の負担が同じであるというのは不公平という考え方はあり得ると思います。

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