老朽化アパート入居者に免責の念書を差し入れてもらうことの有効性
アパート経営をしている江崎さん(仮名)のアパートは最近老朽化が進んでいます。
大地震が発生したときのことを考えると,建設から35年以上経過しているので不安です。
そこで、賃貸人である江崎さんは賃借人に対して一切の損害賠償請求ができないという念書を新規契約者から取り始めました。
果たして,有効性はあるのでしょうか。
消費者契約法8条は,消費者契約においては事業者の損害賠償責任を全部免除する旨の特約は無効とされています。
したがって,念書を差し入れていたとしてもすぐに無効になってしまうかと思います。
そこで全部免除はいけないと考えた江崎さんは一部免除を考えることになりました。
一部免除については、事業者の過失が軽過失のものに限り損害賠償責任を一部免除する特約は有効です。
したがいまして,江崎さんとしては,事業者としてできるだけ一部免除の特約としておくのが好ましいといえます。
具体的には,「金○○円を超えては損害賠償をしない」という条項になると考えられます。
ただし,故意はないにせよ重過失の場合は一部免除であっても消費者契約法10条に照らして消費者の利益を一方的に害するものとして無効になる可能性が出てきます。
もっとも,10条は8条と異なり一般規定にすぎません。したがって,何が重過失かということもあるかと思いますが,消費者に誠実な態度をとって「一方的に消費者に不利益」といわれない配慮をしておくことが重要であると考えます。