従業員に商標を盗られた??

Q 私は、伝統あるX社を経営しています。創業は戦前の1920年です。

 

最近、代替わりがあり息子が後継の社長になりました。ところが、よくある話しですが、古くか らいる番頭と社長との折り合いが悪く、番頭は一部の従業員を引き連れて「新X社」を作って しまったのです。

新X社の設立には、いろいろあるかと思うのですが、我が社の代表的な商品である「A」につ  いて、我が社は商標登録をしていませんでした。ところが、新X社が何と「A」について商標登 録をしてしまい当社に対して、商標権侵害に該当するのでという内容証明郵便を送ってきた のです。

A まず、商売の基本は商標が始まる、ということを心得た方が良いと思います。新製品を思いついたら商標の申請は必要経費だと思って登録しておくことが、今後の予防法務に大きな役に立つと思います。

では、もうX社はA商品を名乗れないかというとそうではありません。商標には先使用権というのが規定されており(32条1項)、立証は結構難しいのですが法律上の権利として使用ができます。

その内容は、新X社が登録した後も排他的禁止権に対抗して、自分の未登録周知商標を継続して使用することができます。ただ、周知されているかどうかというのは、なかなか弁護士を悩ませますので、ここら辺の証拠集めが腕の見せ所となるでしょう。

 

要件としては、不正目的がない、周知性がある、継続して商品に使用している、業務承継者である場合は業務を承継していること-ということになります。

 

問題になるのは、需要者に広く認識されているということではないか、と思います。近時はインターネットの普及で、地方で広く知られているというよりも一部の人に知られているという現象が多く発生しているという印象を受けます。どれくらいの周知が必要であるかは、商品の種類、性質、業態、取引の実情などから比較的狭い地域で製造販売取引が行われている場合には、県内の一部でも良いとする裁判例もありますが、これらはインターネットの普及で微妙になってきているのではないでしょうか。

 

特に周知性については、出願当時の取引の実情、業界慣習、消費者の持つ社会通念に照らして判断されるので、個別具体的なものになると考えられます。

 

昔の経験では、退職した従業員が嫌がらせで、商標登録をしたということもあり、買い取りを求められるということもありました。繰り返しますが商標は、代表的な商品のみならず周辺的な商品についてもきちんと登録しておきましょう。

ページの先頭へ
menu