商標を持っているのに並行輸入されています

Q 私は、アメリカのX社とライセンス契約を締結して、Aという商品を販売しています。これは、パソコンの付属品なのですがマニアの間で人気を博しています。もっとも、パソコンにインストールするというデリケートな面があるので、アフターケアも整備をしています。ところが、インターネットオークションで、かなやまんという人が、A商品を並行輸入して大量に販売しています。

パソコン店や正規販売店にも置かせてもらっている付属品なのですが、ネットオークションの方が安いといわれてしまい困っています。私は商標の申請をして商標権を持っているのに許されるのでしょうか。

 

実は、X社の本物の商品を販売する場合で、内国商標権者が商標の品質管理を行いうる立場にある場合には並行輸入が認められる場合があります。すなわち、並行輸入が認められるケースがあるということになります。

 

並行輸入が許されるためには、最高裁で示された3要件を満たす必要があります。真正商品であること、内国商標権者と外国商標権者が同一人であること、品質の同質性が認められること-の3要件です。

 

率直にいって、真正商品だからこそ並行輸入は問題になるのですから、最初の要件はほとんど無意味であるといって良いでしょう。問題になるのは同一人であるかということです。もっとも、弁護士の下に相談に来られる方というのは、海外の商標権者と日本の商標権者が法律的経済的に同一人物ということはほとんどないと思います。たしかに、メルセデスジャパンなどのような名称からして同一性がありそう、というケースがあるかと思いますが付属品の販売は資本を注入しているケースは少ないと思います。こうした点は商標権に基づく紛争での強みといえるかと思います。

 

そして品質管理の問題ですね。品質管理ということですが、品質管理を行い得るかどうかということになるわけですから、日本における商標権者が勝手に並行輸入されたものについて品質管理を行うということは基本的にしないだろう、と思いますので、商品としての同一性はなさそうということになるかと思います。

もっとも、日本における商標権者も、品質管理を行い得る立場にない場合などは、その結果ライセンス契約を締結していたとしても品質には関係しないということになり、商標権侵害はない、ということになりかねません。

 

判例は、商標を侵害するか否かについて「商標権機能論」という議論を用いています。

 

要するに、商品の識別が侵されて他の商品と区別がつかなくなるか、商品の品質についての保証機能を害しないか、ということになります。

 

この判決は、商標権者が持つ、業務上の信用が害されないか、品質管理のされていない商品の輸入を禁ずることによって、商標権者と需要者とのバランスをとろうとした利益考量的な判決であると評価することができるかと思います。

 

この判決は、海外旅行で、並行輸入品を持ち込もうという人にも参考になるので、少し引用しましょう。

 

「商標権者以外の者が、我が国における商標権の指定商品と同一の商品につき、その登録商標と同一の商標を付したものを輸入する行為は、許諾を受けない限り、商標権を侵害する(商標法2条3項25条)。

しかし、そのような商品の輸入であっても、(1) 当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり、(2) 当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって、(3) 我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから、当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合には、いわゆる真正商品の並行輸入として、商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと解するのが相当である。

けだし、商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法1条)、上記各要件を満たすいわゆる真正商品の並行輸入は、商標の機能である出所表示機能及び品質保証機能を害することがなく、商標の使用をする者の業務上の信用及び需要者の利益を損なわず、実質的に違法性がないということができるからである」。

ページの先頭へ
menu