最低弁済額の意義

小規模個人再生では、①負債基準額、②清算価値のうちいずれか高い額が最低弁済額となります。

負債基準額というのは、ざっくり説明すれば、500万円以下は100万、1500万円以下は300万、5000万以下は負債総額の10パーセントとなります。

清算価値とは、仮に破産となった場合に再生債権者に配当されるべき財産総額のことをいいます。

この点、偏頗弁済などの否認対象行為がある場合については、再生計画案の作成にあたり、清算価値保証原則との関係で上乗せが必要となります。つまり、民事再生は、破産よりも多くの配当を債権者に与えなければならない、ということになっています。破産には否認制度があり、否認権の行使によって回復されるであろう財産の額を加算した額を上回る弁済を行う計画としなければ、破産の場合の配当額を下回ることになり、清算価値保障原則に反することになります。

したがって、どうすればよいかというと、再生債務者としては、当該否認対象行為を前提として、回復されるべき財産の価額を清算価値に加算した上で再生計画案を作成しなければならないことになります。

なお、ものすごくたくさんの偏頗弁済があり、清算価値に上乗せされてしまうと、弁済額が多額で決議に付するに足りる再生計画案の作成の見込みがない場合については、その時点で再生手続は廃止されることになります。

しかし、支払不能となった後とはいえ、生活の糧を得るためには買掛金を作って仕入れをしないと事業の存続ができないというケースも少なくありません。ところが、個人再生は、破産手続では否認権行使の対象となり得るものであって、清算価値の算定にあたり、破産手続において否認権行使によって回復される偏頗弁済の額を上乗せする必要が生じ、履行可能性に問題が生じたりする場合があることになります。

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