民事保全の有効活用

強制執行をして権利を実現する、というのが最終のゴールなわけですが、ゴールにいくまでには時間がかかってしまいます。この間にゴールを隠されたりサッカーボールを隠されるなどのフェイントをかけられてしまったら,残念ながらゴールはかなわないことになります。

 

そこで,特に取引先に倒産の懸念がある場合については,取引先の財産が散逸してしまうことになり、強制執行をする際には財産が残っていないということがよくあるのです。

 

そこで,民事保全による仮差押、仮処分を検討することが考えられます。これは,執行不能に終わるのを防ぐために、暫定的に取引先が保有している資産を仮に保全しておくというものです。

 

ただし,民事保全を行うためには、原則として担保が必要となります。この担保は、申立が認められてから3日から7日以内に支払わなければなりません。

 

この担保の価格が高額であるために保全という手法を用いることに消極的になる場合もないわけではあります。

 

基準ですが、売買代金の保全のための預貯金口座をロックする場合は、売買代金額の10~30パーセントが担保額の基準となる場合があり、最終的には裁判所が決定することになります。

 

もっとも、民事保全は,銀行との取引約定については,期限の利益喪失事由となっていることがあります。そうすると,仮処分がはじまりますと銀行が債権回収に動き出し,銀行がライバルになるということが考えられます。

 

この結果、取引先の資金ショート、倒産への引き金を引く場合もないわけではありません。

 

ですから、民事保全の利用というのは,取引先の倒産の可能性についても考慮に入れて,一定の慎重さが求められるといえましょう。

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