税法にしかなかった「おしどり特例」民法にも。
相続に最も影響を与える変化が、改正民法にある。一応「特別受益」と呼ばれるのであるが、結婚して20年以上の夫婦を対象に生前贈与か、遺贈された自宅や居住用土地を遺産分割の対象から外すことができる「おしどり特例」があります。現行法では、生前贈与をしても持ち戻しの対象となっていましたが、主には妻だけの取り分とすることに変更になったわけです。
そうすると、自宅が分割対象から外れた場合、配偶者は、自宅は固有に得たうえでさらに残された財産について法定相続分を取得できるということになります。
また、こうしたことがなくても、配偶者居住権という制度がもうけられました。改正法では、所有権が他者にあっても配偶者が住み続けられるよう、家の価値をなんとも、所有権と居住権にざっくり切り離してしまう、ということなのです。
この居住権は、おしどり特例とは違いまして、あくまで相続財産の一部にはなります。居住権を選択した配偶者は、法定相続分から居住権として評価額を差し引き、残額を別の財産で取得することになります。ここに、20年以上のおしどり夫婦か否かで、一応の区別がもうけられているといえます。
しかし、ざっくりいえば、妻の取り分が増えるということは、こどもの取り分が増えるということです。資産家ともなると、特例を使うと、相続人間のバランスを大きく崩す懸念も出てきます。