定年後の再雇用、最高裁格差を容認―最高裁が初判断

運送会社「長沢運輸」(横浜市)で定年退職後に嘱託社員となった運転手3人が起こした訴訟で、定年後の労働条件差別が認められるかが問題となっていた。既に名古屋高裁でトヨタ自動車事件が確定しており、同一の論点、すなわち定年後雇用を占う上での注目の最高裁判決が出されたといえる。

最高裁は、長期雇用を前提とした正社員と定年後再雇用の嘱託社員とで会社の賃金体系が異なることを重視。定年後再雇用で仕事の内容が変わらなくても、給与や手当の一部、賞与を支給しないのは不合理ではないと判断した。このように、長期雇用を前提としていないことは、給与体系を変える合理的根拠としていることが指摘されます。

全体的に長澤運輸事件判決とトヨタ事件判決が相反していたものの、結論においては、差別を認める長澤運輸東京高裁に軍配が上がり、藤山雅行裁判官(定年により退官)のトヨタ事件判決は実質的に規範的効力を失ったものといえます。

なお、休日を除く全ての日に出勤した者に支払われる「精勤手当」を嘱託社員に支給しないのは不合理で違法と判断しましたが、些末なことであり、事実上、再雇用は格差を容認し、再雇用に広い門戸を開いた結果となったといえそうです。

この論点は、再雇用後の待遇が争われたもので、いわゆる均衡待遇が争われたハマキョウレックス事件とは、取り扱う論点が異なるといえます。しかし、ハマキョウレックス事件では、予想外に実質的な判断がなされており、「あてはめ」次第では、格差自体は容認されるものの、一部は容認されない可能性があります。労務に詳しい弁護士・社会保険労務士の名古屋駅ヒラソル法律事務所にご相談ください。

背景には、公的年金の引き揚げを背景に、高齢者雇用安定法は、65歳までの継続雇用をもとめていますが、75パーセント賃金を切り下げることを条件とした助成金制度も存在しています。ゆえに、再雇用を条件に賃金の引き下げは広く行われていました。

長澤運輸がアファームされたポイントは、

・定年後の再雇用の嘱託社員と正社員とは賃金体系を明示に区別している

・定年時に退職金の清算が行われている

・年金受給前は調整金で調整を行っている

・年収が退職前の79パーセントになるように配慮されている

以上を指摘し、合理的であると指摘したものです。定年後の再雇用は雇用維持の観点から妥当な判決ですが、労働者側には厳しい内容となりました。

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