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労働基準法37条をめぐって、残業代との区別ができるか争われた例2018/02/17

タクシー大手・国際自動車(kmタクシー)のドライバー14人が、実質的に残業代が払われない賃金規則は無効だとして、未払い賃金を求めていた訴訟(第1陣)の差し戻し審判決が2月15日、東京高裁(都築政則裁判長)であった。ドライバーが逆転敗訴した。

ドライバーたちには名目上、残業代が支払われていたが、「歩合給」から割増賃金や交通費相当額が引かれる仕組みだったため、「実質残業代ゼロだ」と無効を主張していた。現在、この制度は改められている。

ドライバー側代理人の指宿昭一弁護士は、「この手を使えば、タクシー業界にかかわらず、残業代を払わなくても良くなってしまう」と警鐘を鳴らし、即日上告したことを明かした。

●「労働効率性」を高める仕組みとして合理性があると判断

判決のキーワードは「成果主義」と「労働効率性」だ。

判決は、歩合給から割増賃金(=時間給)を引くのは、従業員に「労働効率性」を意識させ、残業を抑止する効果があると判断。合理性があり、残業代の支払いを免れる意図でつくった制度ではないと認定した。

また、労働基準法37条は、通常賃金と割増賃金の違いをはっきりさせること(明確区分性)を求めている。裁判では、残業時間によって変動する歩合給は、明確区分性を欠くのではないかが争点になっていた。

この点について、判決は、歩合給が残業代のように労働時間によって変動するとしても、「成果主義的」な報酬として、通常賃金であることには変わらないと判断。その上で、名目上の残業代が、法定の金額を下回っていないことから、国際自動車の賃金規定を有効と判断した。

●ドライバー「裁判所は、業界の働き方をまったく理解していない」

判決を受けて、訴えたドライバーの1人は「裁判所は、タクシー業界の働き方をまったく理解していない」と憤りを隠さなかった。

「裁判所は『労働効率性』と言いますが、ドライバーはお客様を選べません。早く帰ろうと思っても、『回送』にする前にお客様がいたら断れない。乗車拒否として、処罰されてしまいます(道路運送法13条)」

●1月18日にも同種の裁判でドライバー敗訴

この訴訟の一審・二審は、労基法37条の趣旨に反し、公序良俗違反で賃金規定を無効だと判断。ドライバー側が勝訴した。その後、最高裁が「当然に…公序良俗に反し、無効であると解することはできない」として、高裁に差し戻していた。

国際自動車では、同種の訴訟が計4つあり、1月18日には東京高裁で第2陣のドライバーも敗訴、上告している。

●最高裁の考え方

4 説明
 〇労働基準法37条は時間外,休日及び深夜の割増賃金の支払義務を規定する。

 〇趣旨は,時間外・休日労働は通常の労働時間又は労働日に賦課された特別の労働であることから,それに対し一定額の補償をさせることと,時間外労働に係る使用者の経済的負担を増加させることによって時間外・休日労働を抑制すること

 〇労働基準法37条等所定の算定方法とは異なる割増賃金の算定方法の取扱い
 〇労働基準法37条は,同法所定の割増賃金の支払を義務付けるにとどまり,同条所定の計算方法を用いることまで義務付ける規定ではないから,使用者が労働基準法37条等所定の算定方法と異なる割増賃金の算定方法を採用すること自体は適法

 〇労働基準法37条等所定の算定方法と異なる割増賃金の算定方法が採用されている事案においては,その算定方法に基づく割増賃金の支払により,労働基準法37条等所定の割増賃金の支払がされたといえるかが論じられることが通常である。

 〇従前の最高裁判例は,労働基準法37条等所定の計算方法によらずに割増賃金を算定し,これに基づいて割増賃金を支給すること自体は直ちに違法とはいえないことを前提に,①通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることを要件とした上で(以下「判別要件」という。),そのような判別ができる場合に,②割増賃金として支払われた金額が,通常の労働時間の賃金相当部分とされる金額を基礎として,労働基準法所定の計算方法により計算した割増賃金の額を下回らないか否かを検討して,労働基準法37条等に定める割増賃金の支払がされたといえるか否かを判断しているものと考えられる。学説は,おおむね上記の判例法理を支持するものと理解され(前掲菅野498頁以下,荒木尚志『労働法〔第3版〕』167頁以下,土田道夫『労働契約法〔第2版〕』332頁以下等),下級審裁判例も,上記の判例法理に沿って,当該事案において労働基準法37条等に定める割増賃金の支払があったと認められるか否かを判断しているものと考えられる。

賃金規則等において支払うとされている「手当」等が割増賃金,すなわち時間外労働等に対する対価の趣旨で支払われるものである必要がある。

〇「手当」等がそのような趣旨で支払われるものと認められない場合には,そもそも割増賃金に当たるとはいえず,判別要件を充足するか否かを検討する前提を欠くことになる。上記の各最高裁判例もこのことは当然の前提にしているものと考えられる。

〇判別要件を充足するか否かに係る具体的な判断基準を述べた最高裁判例は見当たらず,また,使用者の賃金規則等において通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができるか否かは,個別の賃金規則等の内容に即して判断せざるを得ない。

〇「基本給(歩合給)に割増賃金が含まれる。」といった抽象的な定めを置くのみでは足りず,賃金規則等に定められた計算式等により,支給された総賃金のうち割増賃金とされた金額を具体的に算定することが可能であり,かつ,その割増賃金に適用される「基礎賃金の1時間当たり金額(残業単価)」を具体的に算定することが可能であることが必要であると考えられる。
〇労働基準法37条は,労働契約における通常の労働時間の賃金をどのように定めるかについて特に規定をしておらず,時間外・深夜労働の有無及び多寡により「基礎賃金の1時間当たり金額(残業単価)」が変動する結果となる定めをすることについて特に規制をしていないことからすると,労働契約においてそのような定めをすること自体が当然に公序良俗に違反し,無効であると評価することは困難

労働基準法37条等は割増賃金の算定方法を具体的に定めており,割増賃金の支払方法が同条等に適合するか否かは客観的に判断が可能であることからすると,端的に当該賃金の定めが労働基準法37条等に違反するか否かを検討し,仮に同条に違反するのであれば,その限度で当該賃金の定めが同法13条により無効となり,同法37条等所定の基準により割増賃金の支払義務を負うとすれば足りるものと考えられ,殊更に公序良俗に違反するか否かを問題とする必要はない

〇最高裁は、本件規定を含む本件賃金規則に基づく賃金の支払により労働基準法37条に定める割増賃金の支払があったといえるか否かについて特に判断を示していない。

〇本件賃金規則における割増金等の定めが,既に述べた判別要件を満たしているかや,これを満たしている場合に,割増賃金として支払われた金額が,通常の労働時間の賃金相当部分とされる金額を基礎として,労働基準法所定の計算方法により計算した割増賃金の額を下回らないか否かを検討していないため

 

最高裁の判断

 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1)ア 労働基準法37条は,時間外,休日及び深夜の割増賃金の支払義務を定めているところ,割増賃金の算定方法は,同条並びに政令及び厚生労働省令(以下,これらの規定を「労働基準法37条等」という。)に具体的に定められている。もっとも,同条は,労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまり,使用者に対し,労働契約における割増賃金の定めを労働基準法37条等に定められた算定方法と同一のものとし,これに基づいて割増賃金を支払うことを義務付けるものとは解されない。
 そして,使用者が,労働者に対し,時間外労働等の対価として労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するには,労働契約における賃金の定めにつき,それが通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とに判別することができるか否かを検討した上で,そのような判別をすることができる場合に,割増賃金として支払われた金額が,通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として,労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討すべきであり(最高裁平成3年(オ)第63号同6年6月13日第二小法廷判決・裁判集民事172号673頁,最高裁平成21年(受)第1186号同24年3月8日第一小法廷判決・裁判集民事240号121頁参照),上記割増賃金として支払われた金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは,使用者がその差額を労働者に支払う義務を負うというべきである。
 他方において,労働基準法37条は,労働契約における通常の労働時間の賃金をどのように定めるかについて特に規定をしていないことに鑑みると,労働契約において売上高等の一定割合に相当する金額から同条に定める割増賃金に相当する額を控除したものを通常の労働時間の賃金とする旨が定められていた場合に,当該定めに基づく割増賃金の支払が同条の定める割増賃金の支払といえるか否かは問題となり得るものの,当該定めが当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し,無効であると解することはできないというべきである。
 イ しかるところ,原審は,本件規定のうち歩合性の計算に当たり対象額Aから割増金に相当する額を控除している部分が労働基準法37条の趣旨に反し,公序良俗に反し無効であると判断するのみで,本件賃金規則における賃金の定めにつき,通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができるか否か,また,そのような判別をすることができる場合に,本件賃金規則に基づいて割増賃金として支払われた金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かについて審理判断することなく,被上告人らの未払賃金の請求を一部認容すべきとしたものである。そうすると,原審の判断には,割増賃金に関する法令の解釈適用を誤った結果,上記の点について審理を尽くさなかった違法があるといわざるを得ない。
 (2) なお,原審は,本件規定のうち法内時間外労働や法定外休日労働に係る部分を含む割増金の控除部分全体が無効となるとしており,本件賃金規則における賃金の定めについて検討するに当たり,時間外労働等のうち法内時間外労働や法定外休日労働に当たる部分とそれ以外の部分とを区別していない。しかし,労働基準法37条は,使用者に対し,法内時間外労働や法定外休日労働に対する割増賃金を支払う義務を課しておらず,使用者がこのような労働の対価として割増賃金を支払う義務を負うか否かは専ら労働契約の定めに委ねられているものと解されるから,被上告人らに割増賃金として支払われた金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かについて審理判断するに当たっては,被上告人らの時間外労働等のうち法内時間外労働や法定外休日労働に当たる部分とそれ以外の部分とを区別する必要があるというべきである。
 5 以上によれば,原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。
 そして,被上告人らに支払われるべき未払賃金の有無及び額等について更に審理を尽くさせるため,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

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