意外と不利ではない日本郵政東京地裁判決

日本郵便で配達などを担当する契約社員3人が、正社員と同じ仕事なのに手当や休暇の制度に格差があるのは労働契約法に違反するとして、同社に未払い分の賃金計約1500万円の支払いなどを求めた訴訟の判決が14日、東京地裁であった。

東京地裁平成29年9月14日は、労働契約法20条の規定において、均衡待遇に近い考え方を示しました。つまり換言すれば完全な平等はもともと予定されていない、といってしまっているのです。

そして、結局は、個別具体的に、待遇の格差が均衡待遇を欠くものであるか、仕事内容や責任の程度、転勤の有無などを総合的に考慮するべきとしました。

しかしながら、上記東京地判は、年末年始手当、住宅手当、病気休暇がない点を不合理としましたが、その他の差別については追認しました。経営者としては、賞与、給与、早出・夜勤手当の格差など、賃金と労働遂行が確保できるかが関心事ですが、これらはすべて不合理な差別ではないとされました。

 

考えてみると、中小企業で住宅手当まで出している会社も少ないでしょうし、年末年始は休みでしょうし、「画期的判決」といわれる割には経営者サイドに有利な判断となりました。

日本郵便は約40万人の社員のうち契約社員が半数を占める。判決は、同社だけでなく、契約社員の労働力に頼る多くの民間企業に格差是正を迫る内容で、日本郵政では大きな影響があるでしょう。

原告の3人は東京、千葉、愛知の郵便局で配達業務や窓口業務を担当する時給制の契約社員。同社には、手当や休暇について正社員と契約社員に違いがあり、3人は八つの手当と二つの休暇制度で解消を求めた。

判決はまず、労働者に対する不合理な待遇格差を禁じた労働契約法20条について、「契約社員と正社員の賃金制度に一定の違いがあることまでは否定していない」と指摘。待遇の格差が不合理かどうかは、仕事内容や責任の程度、転勤の有無などを総合的に考慮すべきだと述べた。

その上で、3人が格差の解消を求めた手当や休暇制度をそれぞれ検討。年賀状配達の業務に対して正社員のみに支払われる「年末年始勤務手当」について、「繁忙期の労働対価を契約社員に全く支払わないのは不合理だ」と認め、正社員の8割を支払うべきだと判断した。賃貸住宅に住む社員向けの住居手当も「格差に合理的な理由がない」として正社員の6割を支払うべきだとした。

さらに、病気休暇は「労働者の健康維持のための制度」、「夏期冬期休暇」は「国民的意識や観衆が背景にある」と述べ、それぞれを契約社員に認めないのは違法だと結論づけた。

一方、3人が正社員と同じ地位であることを確認するよう求めた点については、「法律に規定が無く、労使間の交渉を踏まえて決めるべきだ」として請求を棄却した。

 

本件では、長期雇用に対するインセンティブや有為な人材の確保のため、契約社員と待遇さをもうけることを認めている、と報道されています。このような主観的・意図的な目的での賃金格差については、政府がまとめたガイドライン案でも否定されています。

 

契約社員を雇用する際の参考になると思われます。

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