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独立に際してのトラブル

従業員の引き抜きと引き抜き先の不法行為

 さて、従業員の同業他社への大量移籍が計画的に行われた場合はどうなるでしょうか。東京地裁平成3年2月25日です。

 

 近視眼的にみると、労働者の転職の自由と企業利益の配慮ということになるかと思います。

 

 前回は、背信的な会社設立においても新会社の法的責任追及が難しいことを指摘しましたが、ある意味では、雇用主が責任を負うケースというのは新会社への法的責任追及を許すケースとも考えられます。そこで、雇用主に対する不法行為責任を肯定した東京地裁平成3年2月25日をみてみます。

 

 判旨は、「やはり退職時期を考慮し、事前予告を行うなど、会社の正当な利益を侵害しないように配慮すべきであり、これをしないばかりか内密に従業員を大量に引き抜いたと言う場合は、社会的相当性を逸脱し極めて背信的な方法で行われたとして、それを実行した会社の幹部従業員は雇用契約上の誠実義務に違反したもの」

 

 ここまでは以前紹介した裁判例と変わりません。

 

 変わるのは以下です。

 

 「社会的相当性を逸脱した方法で従業員を引き抜いた場合はその企業は雇用契約上の債権を侵害したものとして,不法行為によって競争企業が受けた損害を賠償する責任がある」

 

 この判決については、社会的相当性を逸脱するかの考慮要素として、従業員の会社での地位、待遇、転職が会社に与える影響、転職の勧誘に用いた方法(退職時期の予告の有無、秘密性、計画性)等の総合考慮をあげています。

 

 損害額については、厳しく限定して、相当因果関係のある損害を1ヶ月として、この間の利益の差額のうち、被告個人の寄与分5割を控除した870万円の限度で認められました。

 

 損害の計算ですが、東京地裁平成3年は、経営側に厳しい姿勢のようです。

・従業員はいつ辞めるか分からずその損害は従業員に請求ができないから、その損害は雇用主は甘受するべきである

・特殊技能の要求がないから、従前の営業体制の回復に時間がかからない

・退職したYは、会社内組織を構築しており、個人的つながりが濃いという事情があり、売上の8割をY氏が作っていたことからすると,Y氏のバイタリティによる売上を損害とするのは妥当ではない。

・もともと定着率が良くない

・以上の諸要素を考慮すると,相当因果関係が認められるのは1ヶ月が相当であるというべきであり、そこからY氏の個人的寄与5割を控除したものと認めるべきである。

 

 このように、東京地裁は、もともと従業員は止めるものなので打撃はすべて経営側で甘受するのが原則という思想を色濃く滲ませています。しかし、一斉退職ということになると、それを甘受するべきか否かは社会的相当性からの逸脱の度合いにより、事例に則した判断が必要です。

 

 また、本件は、Y氏という会社内において、組織内組織を構築して引き抜きをしなくても追従者が現れるというほどのバイタリティがある人だったようです。営業マンが引き抜かれたというわけですから、稀にそのような才能をもった人がいるということでしょう。このことはそのような営業マンに退職されないように待遇には注意を払うべき事を示唆しているようにも思います。

 

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